幼なじみじゃ、なくなった夜。
ご、五億倍って…。
榎波がゆっくり体を起こして、私から離れる。だけど腕はつかんだまま。
「もう一回」
そして見たことないくらいの真剣な顔と口調でそうリクエストしてきた。
「いつどこでなぜ突然俺のことを好きになったのか等々聞きたいことはあるが、とりあえずもう一回好きって言え」
「……や、やだ」
「何で!!」
「恥ずかしいから!」
「却下!!」
却下!?
「やだって言ったらやだ!」
「無理!言え!」
「無理が無理!それに別に突然ってわけじゃ…!」
そう、たぶん、今日急に、榎波のこと好きになったわけじゃなくて。
「たぶん…ずっと前から好きだったんだと…思う」
榎波の動きがピタリと止まる。
「ずっとごまかしてたけど。榎波とはただの幼なじみだからって…その距離に安心してたのかも。でも、足立さんと付き合うんじゃないかって思ったとき、…ザワザワした。わがままだけど、独占欲強すぎだし、今更って感じだけど…
ずっと榎波の隣にいたいって思った」
やばい。恥ずかしくて顔、あげれない。
俯く私に、榎波は何も言わない。
な、何で何も言わないの?もしかして引いてる…とか?
そ、と恐る恐る顔をあげると、
「……っ」
顔を真っ赤にした榎波がそこにいた。