幼なじみじゃ、なくなった夜。
「え、えな…」
榎波、と彼の名前を呼び終わる前に
「ん」
重なったのは、唇と唇。
あまりの不意打ちに目を閉じるのも忘れたまま、キスはそんな私を置いてけぼりにしてどんどん深くなっていく。
そしてキスをしたまま榎波に押されるように後ずさりして
なだれるように倒れ込んだ、ベッドの上。
チュ、とリップ音をたてて唇をはなした榎波が、私を真上から見下ろした。
「夏帆。幼なじみやめよう。俺たち」
「え…」
「幼なじみやめて、
俺の恋人に、なってください」
何でだろう。
ずっとどこかで、榎波と幼なじみじゃなくなることが怖かった。幼なじみっていう名前をなくして、どうなるのかが怖かった。
でもまさか、こんなに優しくて、満ち溢れて、幸せな気持ちになるなんて。
「…はい」
私の返事に榎波は優しく笑って、そして、とびきり優しいキスをくれた。