極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
遠藤さんはそう言ってくれるけど、実際にはモテないし、仕事もまだまだだし、頑固だし、どちらかと言えばいいとこなし。

最近は忙しくて美容院にもまともに行けてない。
そのせいで髪は伸ばしっぱなしだし、メイクも簡単に済ませてしまいがち。


「女子力低いよなー…」


自分で思って自分で凹むのもおかしな話だけど、桧山さんの半分でいいから魅力と余裕があれば紬に新人教習なんて思わせずに済んだのではないかと思わずにいられない。


「か〜つ〜ま〜た〜く〜んはゆ〜しゅ〜だ〜よぉぉ」


私の頭上で揺れた声が響いた。


「あら、所長。また振動タイプのダイエットベルトをお腹に巻いているの?頬に美顔ローラーまで当てて。さすがにそれは笑いそうになるからやめてちょうだい」


笑いを堪える遠藤さんの声を聞いて見上げれば、たしかにそこには美顔ローラーを転がしてる所長がいた。

私が入社した当初から美意識は高かったけど、昨年、還暦を迎えた辺りからその意識は加速し、今ではこんな風に仕事中でも美容グッズを手放さない。


「所長は元々、細身で顔もスッキリしているんですから美顔ローラーもダイエットベルトも必要ないですよ」


これはお世辞ではない。
所長は本当に若々しく見える。
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