極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
玄関のドアを後ろ手に閉めてから「ふぅ」と小さく息を吐く。


「なんだかなぁ」


誘いは断るつもりでいたからこれでいいんだけど、あっさり送り届けられると拍子抜けしてしまう。


「キスくらい…」


したかったな、とお風呂で今日1日の出来事を振り返りながら思う。

でも、そう思ってしまったことに急に恥ずかしくなり、慌ただしく浴槽から上がる。


「なにを考えてるんだ、私は」


髪をドライヤーで乾かしながら独りごちる。

一人暮らしが長くなるとこんな風に呟くことが多くなるけど、静かな室内で呟くより、こうしてドライヤーの音の元で呟く方が虚しくないことに気付いてからはこうして気持ちを吐き出すようにしている。


「キスを期待するなんて。社長は芳川さんのことで気に病んでいるんだから…って、あ!」


そうだ。

大事なことを思い出した。

髪が生乾きなのも気にせずリビングに置いてあるリュックの中身を出し、急いでパソコンを開く。
私には早急に調べなければならないことがあったんだ。

明日の朝一には所長に話が出来るように…。

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