極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
反射的に降りるとその直後、背後でドアが閉まった。


「無事に降りられて良かったな」


淡々とした口調で言われても別な意味で無事ではないから返す笑みが引きつってしまう。

異性に抱き締められるなんて久しぶりで、紬にとってはなんてことない事なのかもしれないけど、高所に立つのと同じくらい心臓に悪かった。

それでも親切にしてくれた紬を責めることは出来ない。


「ご面倒お掛けしました」


と頭を下げ、気恥ずかしさを隠すように一気に話す。


「以後、気を付けます。そして私はここで失礼します。次はゴルフでお会いしましょう。あ、その前に、その節はすみませんでした。参加を承諾して下さり、ありがとうございます。詳細は実松さんを通してご連絡します。それと当日はお迎えにあがりますので、場所がわからなかったら連絡入れます。では」


ここでもう一度一礼。
それから踵を返して去る。

でも紬が呆気にとられたようにポカンと口を開けていたのが気になって、振り返り、様子を伺うようにチラッと見れば、紬は手の甲を口元に当て、「フッ」と小さく笑い、言った。


「変な女」


褒め言葉ではないだろう。
それでも笑う紬を見るのは初めてでまた目が離せなくなってしまった。
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