極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「きみのことを新人だと思っていたという話はしたよな?」
「え?あ、はい」
突然話が変わったことに驚く。
でもあの日のことは今でも鮮明に覚えている。
ようやく認められて握手を交わしてくれた日だ。
忘れるはずがない。
「あの日まで俺はきみのことを『なんて使えない鈍感な女なんだ』って思っていた」
「冷たい態度を取られても平気なフリして毎月訪問していたから、ですよね」
苛立たせていたことくらい気付いていた。
「そこまで鈍感じゃありませんよ」
乾いた笑いとともに言うと、紬は首を左右に振った。
「そこに関しては本当に俺の見立て違いだ。謝る。きみは鈍感なんかじゃない。芯があった。どんな状況でも任せられた仕事を投げ出さない確固たる意志と、いつかきっと認めてくれるという気の長さと自信が」
そこまで褒められたものではない。
でも紬がまだ話す様子が見受けられたので否定はせずにそのまま耳を傾ける。
「本当は今みたいに顔に出したかっただろう。冷たく当たるような人間がいる会社になんて来たくなかっただろう。怖いエレベーターになんて乗りたくなかっただろう。それなのにきみは社のためを考えていてくれた。本当にごめんな。それとありがとう」
そんな風に言ってもらえる日が来るなんて思ってもみなかった。
嬉しくて涙が出そうだ。
でも次の言葉を聞いて涙は引っ込んだ。