極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「ただ、きみの実力を知らない一部の職員から『あの税理士で大丈夫なのか』という声が挙がっている」
その話を聞いて突然話題が変わった意味が分かった。
というより話は繋がっていたのだ。
直接関わりのない、外部から来ている税理士のことを『大丈夫なのか』と職員が心配すること自体滅多にないことだけど、私の奇怪な行動が悪目立ちしているせいで新任が若い女だと知れ渡り、職員の方に不安を与えてしまったのだ。
「きみは自覚がなかったようだが奇怪な行動もその容姿もとても目立つ。そのせいであまり良くない噂が流れてしまっている」
噂の内容について紬は触れない。
でもおおよその検討はつく。
どうせ紬を誑かして仕事を取ってる、とかそんな類いのものだろう。
そんなことないのに…って、あ!
「もしかしてこの前のエレベーターの中のこと、誰かに見られていたんですか?!」
思い当たることと言えばそれしかない。
紬がなにも言わないところを見れば正解のようだし。
「すみません。社長は悪くないのに私のせいで。誤解だと弁明します」
「いや、そんなことする必要はない。それよりきみの実力を認めさせた方が早い」
そう言うと、紬は赤信号で停止したのを機にこちらを向いて言った。
「再来月の決算報告。それを役員たちの前できみの言葉で話して欲しい」