極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
特別な配慮は必要ないのだ。
公平であることがいちばん。

でも、そのまま黙ってしまった紬を見て、男のプライドを傷付けてしまったかもしれないと思った。

だからケーブルカーの往復券はありがたく頂戴する。


「すみません。ありがとうございます」
「ん」


たったひと言で済まされているところを見ると、やはり先程の一件が響いていると確信する。
だから気分を変えるように明るく声を掛けることにした。


「紅葉にはまだ早いのに混んでるんですね」


老若男女問わず、登山の格好をした人がケーブルカーの前に並んでいる。
中にはヒールの靴を履いている女性もいて興味本位で見してしまう。


「あんな靴で登れるんですか?」
「初心者コースなら歩ける。ただ、目的は登山じゃないだろうな」


登山以外にここに来る目的が思い浮かばないけど。


「夏から秋にかけてケーブルカーを降りた場所にビアガーデンが開かれているんだ。まだ開店時間には早いが、のんびりと山頂まで行って戻ればいい頃合いになる」


なるほど、それならヒールという登山に相応しくない靴で来ているのも納得だ。
気にしてみれば他にも夏らしいワンピースやショートパンツで来ている若者がちらほら見受けられるし。


「そんな余所見ばかりしてると躓くぞ」
「あ、はい…って、わっ!」


言われたそばから段差に躓いてしまった。


「危ない!」

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