極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
腕を紬が素早く掴んでくれたから転ばないで済んだけど、頭上から厳しい視線が注がれた。


「すみません。忠告されていたのに」


怒られる前に先に謝ると紬は小さく息を吐いて、私の腕から手を離した。


「きみは注意力散漫過ぎる。危なっかしくて見ていられない」


そう言うと今度は私の右手を取り、自身の左手と重ねた。


「え?手、繋ぐんですか?!」
「この方が余計な心配しなくていい」


いやいや。
おかしいって。
恋人でもないのにこんな風に手を繋ぐなんて。


「ひとりで歩けます。ちゃんと注意して歩きますから離してください」


でもあっさり無視されてしまう。
どんどん先を行く紬に小走りでついて行きながら、背中に訴える。


「これじゃ、誤解されますよ」
「ここに知り合いはいないだろ」


こちらが見えないだけでいるかもしれないじゃないか。

大体、紬の抜きん出た容姿は目立つ。

現にヒールの靴を履いている20歳前後の女性たちがコソコソっと話す声が耳に届いてきている。


「超カッコいいんだけど」
「どこかで見たことあるよね?」


おそらくメディアに出たことがあるから記憶にあるのだろうけど、まだ学生のような雰囲気の彼女たちには紬が今をときめく有能な経営者だとは分かっていない。
なにかのモデルや芸能人の類だと勘違いしているようだ。


「サイン、もらっておく?」
なんて言ってるくらいだから。
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