極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「嘘も方便ですね」
彼女たちの背中を見ながら続ける。
「恋人だなんて。嘘だとバレなかったからいいですけど、かなり微妙でしたよ。それにビアガーデンも。行きづらくなっちゃいましたね」
「行きたかったのか?」
様子を伺われている気配を感じながらも、そのまま前を向いて答える。
「話題のひとつとして見ておきたいな、と思った程度です」
それに紬は運転しているからお酒を飲むことが出来ない。
ひとりで飲むのも味気ないし。
そう考えると別に言わなくてもいいことだったかもしれないな、と思う。
「俺のことは気にしなくていいのに。今日はきみのための時間なんだから」
案の定、紬に気を使わせてしまった。
「でも本当に大丈夫なんです。それに今日の目的は高所恐怖症の克服。ですよね?」
再確認するように目線だけ上げると紬は困ったように頬を掻いた。
「まぁ、そうなんだが…」
まだどこか気にしている様子の紬の手をこれ幸いにと無理に引く。
そしてケーブルカーに乗る列に並び、手を離せば、ちょうど到着した車内に乗り込むことが出来た。
「あ、ラッキー!これなら怖くない」
登山人気のおかげで車内は満員。
ちょうど真ん中に陣取れたので、視界には人しかおらず、窓の外は見えない。
でも紬は納得していなかった。
「ダメだ」
と言って、人混みの中から私の手を取り、素早く車外に降りてしまった。
「あれじゃ意味がない。次のケーブルカーで行こう。一番前で待っていれば窓側を確保出来るから」
「そこまでしなくてもいいのに」
一気にテンションが落ちる。
でもそんなことお構いなしに紬は乗り場の一番前に並んだ。