極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
途中、様子を見るように振り返る紬に小さく頷いて応える以外、特に会話はない。

黙々と歩くだけ。

でも不思議と無言の時間が退屈ではなかった。

周りの澄んだ空気、土や石を踏む音、木々が風に吹かれて重なる音。
すべてが心地いい。
暑ささえ気持ちよく感じるなんて、登山も悪くないものだ。

だから忘れていた。


「社長。これはさすがに無理そうです」


吊り橋があったんだった。
さほど長いものではないし、緑豊かな中に構えられた橋だから下を見なければ葉しか目には入らない。

でもトラウマになった原因が橋だったせいで私には恐怖だ。

現に、見ているうちに足が震え出した。


「ダメだ…」


立っていられず、その場にしゃがみ込む。

すると紬もしゃがみ、様子を伺うように顔を覗き込んできた。


「怖いか?」


その心配そうに私を見る視線と声にこんな状況なのに胸が締め付けられ、胸元を押さえる。


「苦しいのか?トラウマを克服出来れば、と思ったんだがそんなに単純なものじゃなさそうだな。よし。引き返そう」
「え?!それは出来ません」

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