極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
優しくそっと触れた手と、近距離で見つめ合うことに鼓動が一気に加速する。


「俺じゃ安心しないかもしれないがこのまま行く。掴まってろ」


そう言うと私の返答など無視して足早に橋を渡り始めた。
怖くていつものように目を閉じる。
その分、聴覚が研ぎ澄まされ、ほかの登山客の声が聞こえてきた。


「あら、若いっていいわね」
「大丈夫?怪我?」
「怪我じゃないってよ。詳しい事情は分からんが、頑張れ!イケメン!」


紬が…応援されてる。
大企業の社長になにさせてるんだ、私。


「本当にすみませんっ」


橋を渡りきり、下ろしてもらってすぐに謝る。


「いや、謝らなければならないのは俺の方だ。
トラウマの上書きにならなければいいが」


申し訳なさそうに視線を下げた紬を見て声を大に否定する。


「そんなことにはなりませんっ!」


克服することには繋がらなかったけど、前向きになれたのは紬のおかげだ。
トラウマの上書きなんて、絶対にならない。


「それならいいが…」


困ったように眉根を寄せた紬は、今度は私のおぼつかない足元に視線を落とした。


「その状態の足じゃこの先進むのは危ないだろう。だから、ほら。手を繋いで行こう」


極度の緊張から一度脱力してしまった足の力はなかなか元通りには動かない。
でもさっきよりはるかにマシだ。
< 68 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop