極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
「ゆっくりになってしまいますが、歩けます」
「震えてるくせに。無理するな」
当たり前のように差し出される手を取っていいものか、すごく悩む。
実際に歩き出したら手を引いてもらった方が歩きやすいとは思う。
でも私のペースに合わせてもらうのは申し訳ないし、これ以上、彼に近付くのは危険だ。
優しくされればされるほどそれが積もって引き返せなくなる。
その恐れがある以上、手を取ることは出来ない。
リュックの肩紐をギュッと握り締め、先の道を見つめる。
「自分の足で歩きます」
そして一歩を踏み出そうとしたとき、握り締めていた左手に紬の手が触れた。
それに対し、反射的に肩紐から手が外れる。
するとその隙に大きくて温かい手が回り込み、力強く包み込まれた。
「頑固者だな」
そんな風に悪く言うくせに、様子を伺いながら歩いてくれるのだから、やるせない。
「関係者でなければ良かったのに」
関係者だからこそ、こうして一緒の時間を過ごせている訳だけど、紬との出会いが個人的なものであったのならこの高鳴る鼓動を頭で必死に否定することなく、心の赴くまま彼を好きになれたのに。