極甘求婚~クールな社長に愛されすぎて~
頭と心がバラバラなのは苦しい。

お蕎麦屋さんでのお会計のときにはあり得ない、なんて思っていたけど、もうそんな風には思えない。

こんなに優しくされて、好きにならない方がおかしい。

でもこれは私の一方的な気持ちだ。

気付いたのも今だし、このまま隠し通せればきっと関係は崩れない。
それなら登頂するまでの間に、胸のうちに広がっている紬への気持ちを閉じ込めよう。

最後に待ち構えていた長い階段の手前で彼の手を離す。


「ここからはひとりで登ってみます」


体も心もあちこち痛いけど、大丈夫。
登頂するまでにこの気持ちは封印する。
それを意識して登ること数十分。


「はぁー!着いたー!」


ぐーっと手を広げて空気を思いっきり吸い込む。


「うーん!気持ちいい」


汗はかいたけど、嫌な汗じゃない。
田中さんがリュックに入れてくれていた冷えたスポーツドリンクが体に染み渡る。
達成感がモヤモヤしていた気分を吹き飛ばしてくれた。


「運動するっていいですね」


隣で汗ひとつかかずにシレッとした顔で飲み物を口にしている紬には物足りなかったかもしれないけど、気分は最高だ。
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