リト・ノート
翌週まで十分に脳内反省を繰り広げ、美雨は「もう絶対に羽鳥と恋バナなんかしない」と心に決めて水曜を迎えた。

羽鳥は美雨の出方を窺うように、口数少なく部屋まで付いて来る。階段を登りながら、決めていたセリフを言う。

「こないだは変なこと言ってごめんね。でも、そんなことより、羽鳥はどうなの?」

「いや、だから俺は」

「体育祭の時、リトが助けてくれた感じしたの?」

「ああ……やたら話が簡単に通ったし、終わった後も変に評判よかった。どうやったかはわかんないけど、俺の力じゃない気がした」

そうかなぁ、と美雨は疑っていた。ただ単に、羽鳥が本気を出したからじゃないかとも思う。

迷いがなくて有無を言わせないところが時々出る。リーダーシップというものだろう。羽鳥と沙織にあって、美雨にはカケラもないもの。

そう美雨は思っていたが、願いを叶えてもらったという羽鳥に水を差すようで言えなかった。


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