リト・ノート
2人でリトへの報告はしたものの、なぜか体育祭の状況はもう知っている様子だった。

「僕はリトと同調しているが、この身体と一体化しているわけでもない」

リトは黄色い羽根を広げて見せる。

それはわかる。普段世話をしているときのリトは、相変わらず臆病で人嫌いのいつものリトだと美雨も気づいている。

羽鳥に教えてもらってわかって来たのだが、確かにリトはチャネリングをしている。フルトランスチャネリングという横文字を使わなくても、日本語では「憑依」とか「巫女おろし」とか言われる状態だ。ただの鳥のリトとは違う存在がそこにいる気配がする。

「じゃあどうやって見てた? カラスにでも憑いてんの?」

「そう考えてくれても構わない」

「だからなんなんだよ、そのもったいぶった態度は。 でもさ、楽しかった。ありがとう」

率直にお礼を伝えたことに美雨が密かに感心しているうちに、今日はもういいよな、と羽鳥は手を離した。
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