リト・ノート

「次、お前の番な。やりたいこと、考えた?」

美雨がいつもどおりだとわかったからか、羽鳥は機嫌よく座り込んだまま話をして帰る気らしい。

美雨も疲れはあるが眠ってしまうほどではないので、ベッドに寄りかかって話す分には問題なかった。

それに疲れのせいか変な緊張感もなく、リトと話した後は普段より自然に話せる気がした。

「学校サボって遊びに行くとか?」

「やりたくないよ」

「焼肉食いたいとか。塾やめたいとか」

「羽鳥のやりたいことなの? 私には塾は必要だと思う」

週に2回の塾をやめたいとは思わない。羽鳥の方は親に塾に通わされそうなことに抵抗しているらしい。部活に影響が出るからだろう。

「とことん優等生だよな」

「羽鳥だって高校は失敗したくないでしょ? 」

「公立トップ校受かってリベンジ、とかそんな感じ?」

「ううん、たぶんもう一回女子校。高校枠も少しあるから。羽鳥が受けたところは、お兄ちゃんが行ってるの?」

「そう。中高一貫だから高校募集はない」

「いいなぁ」

「どこが?」

いつになくきつい声に、美雨は口をつぐんだ。高校から入れないことを羨ましがったみたいでおかしく聞こえただろう。
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