ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
告白もできないまま、初恋は終わったはずだったんだけど、そう簡単に気持ちを消すことはできなかった。


何度も諦めようって思ってきた。謙信くんはモテて次々と彼女が変わっていたから。相手はいつも綺麗な人や可愛い子ばかり。明らかに私なんて眼中にナシ。

なのにしつこく今も密かに想いを寄せてしまっているのは、彼にとって私は幼なじみだからだ。

こうやって毎年誕生日にはプレゼントを送ってくれる。クリスマスにも。

ずっと私のことを気にかけてくれていて、入社後社内で会えば「仕事には慣れたか?」って話しかけてくれる。

幼なじみだからこその特権だと思っている。その度にうれしくて幸せな気持ちになれて。


あぁ、やっぱり私は謙信くんのことが好きって思い知らされてしまうんだ。


この会社に入社を決めたのだって、惨敗だったってことはもちろんだけど、なにより謙信くんが専務を務める会社だったから。


だけど、な。今思えば入社するべきではなかったのかもしれない。大学生の頃は年に数えるほどしか謙信くんに会えなかった。
< 10 / 251 >

この作品をシェア

pagetop