ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
それが恋心に変わったのは、小学五年生の時。

いろいろあって学校が変わり、新しい環境に慣れない私をいつもやさしく励ましてくれた。


十一歳の私から見たら、十七歳の謙信くんは大人だった。そんな彼に釣り合う女の子になりたくて、大人っぽい服を着たり、髪型を変えてみたり。子供ながらに精いっぱい片想いしていたと思う。

それに人と話すのが苦手な私にとって、普通に話せるのはおじいちゃん以外では謙信くんだけだったから。

私にとって彼はとても特別な存在になっていったんだ。


けれど私の想いは届くことはなかった。謙信くんにとって私は妹のような存在だったから。

可愛がってくれるのも、心配してくれるのも、やさしくしてくれるのも全部そう。それは今も変わらないと思う。


気づいたのは、私が小学六年生の時だった。初めて謙信くんが同じ学校の制服を着た彼女といっしょに歩いているところを見たのは。

手を繋いで楽しそうに話しながら歩くふたりを見て、すぐに理解できた。付き合っているんだって。
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