ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「あ、えっと……そんな人いないから」

慌てて小声でもう一度否定すると、謙信くんは私をジッと見つめてきた。

「じゃあなにがあった? 教えてくれる? 教えてくれないなら、俺がこれ飲んじゃうけど」

そう言うと彼は手にしたままのレモンティーをチラつかせた。

これはなにがなんでも話さないことには、納得してくれなさそうだ。それに私も今の気持ちを誰かに聞いてほしかった。

ジッと彼を見つめると謙信くんは私の気持ちを汲み取ってくれたのか、「リビングに行こうか」と言った。



「そうか、それですみれの様子がおかしかったんだな」

「……うん」

あれからリビングへ移動し、ソファで事の経緯を彼に話した。その間、謙信くんは口を挟まず私の話を最後まで聞いてくれたんだけど、すべて話し終えると彼は顎に手を当て、複雑な顔を向けてきた。

「謙信……くん?」

名前を呼ぶと、彼は言葉を選ぶように話し出した。

「話を聞いていて思ったんだけどさ、すみれは友達がほしいんだよな?」

「それは……」
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