ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
信じがたい話に動揺してしまう。でも謙信くん、余裕ない表情だった。誰にもらったのかすごく気にしていたし。

信じられないけれど、信じてみたくなる。もしかしたらヤキモチを妬いてくれたのかもしれないと。


どれくらいの時間、彼に抱きしめられていただろうか。小さく息を漏らすとゆっくりと離された身体。覗き込んできた彼の顔はいつも通り。

「悪かった」

「……ううん」

びっくりしたけれど、嫌じゃなかった。むしろ嬉しかったし。

嬉しさを噛み殺すように唇をギュッと結ぶ。

「じゃあここ最近、すみれの様子がおかしかったのは、なにが原因なの?」

「え?」

「なにかあったんだろ? ……てっきり俺は誰か気になるやつでも、できたのかと思っていたけど違うみたいだし」

「あっ、当たり前じゃない!」

思わず大きな声を出してしまった。だってそんなことあり得るわけないもの。謙信くん以外に気になる人ができるとか。

けれど謙信くんは突然私が大きな声を出したものだから、目を丸くさせた。
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