ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「だから部長とお昼を食べないようにして、せっかく気遣ってくれた綾瀬さんのことも避けているんだろ?」

確信を突く謙信くんに、返す言葉が見つからない。すると彼はいつになく厳しい口調で言った。

「すみれ……お前は本当にそれでいいのか?」

「え……」

真剣な瞳を向けられ、息を呑む。


「せっかく部長と話せるようになって、綾瀬さんだってお前のことを気にかけてくれているんだろ? 部長、急にお前に避けられて傷ついているかもしれない。綾瀬さんだってますます心配しているかもしれない。……それなのに、このままずっと傷つくことを恐れて、ひとりでいるつもりか?」

謙信くんの言葉が鋭い刃と化して、次々と胸に突き刺さる。


「すみれは迷惑をかけたくないって言うけど、それはすみれの考えであってふたりは違うかもしれないだろ? 迷惑だなんて思っていないかもしれない」

容赦なく謙信くんは続ける。

「お前は結局逃げているだけだ」

「……っ」

わかっている、謙信くんの言う通りだって。私はただ逃げているだけだと思う。
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