ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
部長は私を見据え目を細めた。

「桐ケ谷さんともっと料理のお話をしたいと思っています。……どうして桐ケ谷さんとお話していると悪く言われるのか理解できませんが、僕はなにを言われても気にしませんよ」

「部長……」

そう言うと部長は目尻に皺を作り微笑んだ。

「たまにでいいので、料理のお話させてください。もっと桐ケ谷さんからレシピを教わりたいので」

それを言うのは私の方だ。もっと部長と話をしたい。料理の話を聞きたい。

「……はい！」

力強く答えると、部長は早速料理の話を始めた。

嬉しかった。『僕はなにを言われても気にしませんよ』って言ってくれて。そして勇気をもらえた。


私……今までずっと周囲の目を気にしてばかりだった。また悪く言われたらって思うと不安で、私と話してもつまらないって言われるのが怖かったから。

でも周囲になにを言われたって気にしなければよかったんだ。だって私が誰と話しても、なにを思われても関係ない。

私が仲良くしたい、話をしたいって思う相手の気持ちが一番大切だったんだ。

少しだけ自信が持てた私は、昼食を取りながら久しぶりに部長との話に華を咲かせた。
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