ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「ありがとう……謙信くん」

ポツリと感謝の気持ちを呟いた後、部長や綾瀬さん、先輩たちに伝えたように自分の本音を吐露した。

「私が勇気を出せて、伝えることができたのは謙信くんのおかげ」

幼い頃は、落ち込む私のそばに寄り添ってくれていた。いつも気にかけてくれて……。

そして変わりたいって言った私の背中を押してくれた。

謙信くんがそばにいてくれなかったらって思うと、怖くなるほど私の中で彼の存在は大きなものになっている。

だからこそ、しっかり伝えたい。

顔を上げ、彼の瞳を捕らえ笑顔で言った。


「……昔からずっとそばにいてくれて、勇気をくれてありがとう」

「すみれ……」

目を見開き驚く謙信くんに、照れ臭くなる。

こうやって面と向かって彼に「ありがとう」って伝えたのは初めてだから。

彼の胸の中でモジモジしていると、彼の手が顎に添えられ視線を合わせられた。

「えっ……」

至近距離の彼は苦し気に表情を歪めている。

どうして? なぜ? 疑問ばかりが頭の中を埋め尽くす。
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