ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
二年間しかいっしょに過ごせなかったけれど、私はふたりにたくさん愛されていたんだと思う。

「お父さん、お母さん……私、二十三歳になったよ」


節目の歳を迎えるたびにいつも想像してしまっていた。ふたりはどんな言葉をかけてくれたかな? 喜んでくれたかな?って。

けれど今の私を見たらふたりは悲しむかな? この歳になっても友達もいなくて、人と関わるのが苦手な私を見たら。

仏壇に飾られているふたりの写真を眺めてしまっていると、茶の間からおじいちゃんの私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「すみれ~、できたぞ」

「はーい!」

今日は私の誕生日。せっかくおじいちゃんがお祝いしてくれるんだもの。しんみりしちゃうのはもう終わり。


気持ちを入れ替え仏間を後にし茶の間に向かうと、テーブルの上にはケーキをはじめ、私の大好きなおじいちゃんお手製のちらし寿司や、魚の煮つけ、煮物がたくさん並べられていた。


「うわぁ、すごい」

「そうだろう? 昼間から仕込んでおいたからな」

「……でも、この量はふたりではちょっと多くない?」


テーブルに並べられている料理すべて、おじいちゃんとふたりで食べるのは量が多い気がする。

お腹はペコペコだけど、さすがにこの量は食べられない気がする。

するとなぜかおじいちゃんは、にっこり笑った。


「当たり前だ。ふたりで食べるんじゃないんだから」

「……え、誰か来るの?」
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