ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「でもすみれちゃんは彼と幼い頃からずっといっしょだったんでしょ? 大人になっても頻繁に会うくらいだもの。私は彼がすみれちゃんのことを好きになるのも、時間の問題だと思うけどな」

そう言うとグラスに残っていたビールを一気に飲み干した沙穂さん。

彼女の言うことが現実になったら嬉しい。……けれどそうなるとは思えない。

「そう、でしょうか。……私はこの先、彼にとって初めての好きな人になれるでしょうか?」

不安な気持ちを吐露していく。


「私はそう思えなくて。……お互いひとりっ子で兄妹がいなかったから、彼は私のこと妹としか思っていない気がするんです」

ハグやキスをしてくるのは、妹の延長上の感情な気がする。

いや、妹っていうかもしかしたらペットかなにかと思っているかも。……だって謙信くん、これまでたくさんの人と付き合ってきたわけだし。

ハグだってキスだってその先だって、経験豊富なはず。

そんな彼にしてみたら、私とハグやキスをすることも、特別な感情を抱いていないんだと思う。

やだな、私。自分でそう結論出して落ち込むとか。

でも幼なじみとしてずっとそばにいたからわかるんだ。なんとなく謙信くんの気持ちが。
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