ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

料理を作るときはいつもひとりだったから。

誰かといっしょにキッチに立つって、ちょっと照れ臭いかも。

自然と口元が緩んでしまう。

するとおばさまは嬉しそうに話し出した。

「そっか。……じゃあこれからはふたりで、いっしょにたくさん料理を作りましょう。だからいつでもいらっしゃい。……私も主人も大歓迎よ」

「おばさま……」

私を見据え微笑むと、おばさまは「約束ね」と小声で言った。

そんなおばさまにつられるように笑顔で頷いた。

おばさまとふたりで料理ができる未来を想像すると、楽しみでしかたない。

好きな人と結婚するってことは、そばにいられるだけが幸せじゃない。……こうやって彼の家族との、幸せな時間も待っているんだね。


それからおばさまが用意してくれた料理を食卓へ運び、食事が始まる頃には、緊張もなくなり、四人で楽しいひと時を過ごしていった。



「謙信、ちょっといいか？　仕事のことで相談したいことがあるんだ」

「いいけど……悪いすみれ、ちょっと席を外しても大丈夫か？」

昼食を終え、片づけを手伝った後、おじさまが買ってきてくれたケーキを紅茶と共にいただいていると、おじさまが謙信くんに声をかけ立ち上がった。

すると彼は私を気遣い、心配げに私を見つめてきた。