ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「おじいちゃん、ごちそうさまでした。どれもすごく美味しかった」

「それはよかった」

私の話を聞いて安堵するおじいちゃん。

「残りはラップしておくか。そのうち来るとは思うが……」

ボソッと呟きながら立ち上がると、おじいちゃんはキッチンへラップを取りに行ってしまった。

「あ……っ」

今聞けばよかった。「誰が来るの?」って。

でもさっき聞いていないのか? 知っているものとばかりって言っていたよね? ってことは間違いなく私も知っている人なはず。


けれどそうなると考えられるのはひとりしかない。だって私が知っている人で話す機会が多いのは、同じ会社に勤めている謙信くんしかいないけど……。

「いやいや! 謙信くんには今日、プレゼントもらったし!」

それなのにわざわざ家にまでお祝いに来てくれるとは考えられない。今まで一度も来たことがなかったし。

それじゃ本当に一体誰なんだろう。今日うちに来る人は。

ボーっと考え込んでしまっていると、ラップを手にしたおじいちゃんが戻ってきた。

「これでよし……と」

手早く余った料理にラップをかけると、なぜかおじいちゃんは再び立ち上がった。
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