ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「ちょうどこの頃ね。……ほら、すみれちゃんといっしょに映っているこの写真! 凛々しい顔をしちゃって、気分はお兄ちゃんだったんじゃないかしら」

おばさまが指差す写真は、私も持っている写真だった。

家の庭で謙信くんに、自転車に乗る練習を手伝ってもらっている時のもの。

謙信くんのおかげで私、自転車に乗れるようになったんだよね。


「すみれちゃんがいてくれたおかげで、あの子はよく笑うようになった。私たちにすみれちゃんの話を嬉しそうに話すようにもなってくれて。……それからよ、私たちが本当の親子のような仲になれたのは。私も主人も、すみれちゃんにはすごく感謝しているの」

「そんな……」

そんなことない。むしろ感謝したいのは私の方だ。

私は謙信くんがいたから、辛い日々も乗り越えられた。彼がいてくれたから、今の私がいるのだから。


「謙信は私と主人にとって大切な息子。だからこそ、謙信には幸せになってほしいと願っていたわ。……それなのにあの子、結婚はするつもりない、興味ないの一点張りでね。私も主人も心配でしかたなかったわ。もしかしたらあの子が過ごした幼少期が原因なのかもしれないって」
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