ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
おばさまが言う謙信くんの幼少期が気になるけれど、さすがにそこまで踏み込んでは聞けなかった。
もしかしたらおばさまやおじさまにとっても、謙信くんにとっても忘れたい過去なのかもしれないから。
私も半年間だけど、施設で過ごしたことがあるからなんとなくわかる。
いっしょに過ごした友達は、みんな明るいけれどそれぞれ事情を抱えていたから。
夜になると、声を押し殺して泣いている子もいた。中には常にひとりでいる子も。
「それを先生に相談したのよ。そこで先生に持ちかけられたの。じゃあお見合い相手にうちの孫はどうだろうかって」
「そうだったんですか……」
「私も主人も大賛成だったわ。それに結婚に興味ないって言っていた謙信が、相手がすみれちゃんだって聞いたらコロッと手のひらを返しちゃってね。私も主人も拍子抜けしちゃったわ」
おばさまはクスクスと笑うと、アルバムから私へ視線を向けた。
「そんな謙信を見て思ったの。もしかしたら謙信は、ずっとすみれちゃんが大学を卒業するのを待っていたのかもしれないって。すみれちゃんと結婚したいから、私たちには結婚に興味ないって言っていたのかもしれないって」
「……まさか」
もしかしたらおばさまやおじさまにとっても、謙信くんにとっても忘れたい過去なのかもしれないから。
私も半年間だけど、施設で過ごしたことがあるからなんとなくわかる。
いっしょに過ごした友達は、みんな明るいけれどそれぞれ事情を抱えていたから。
夜になると、声を押し殺して泣いている子もいた。中には常にひとりでいる子も。
「それを先生に相談したのよ。そこで先生に持ちかけられたの。じゃあお見合い相手にうちの孫はどうだろうかって」
「そうだったんですか……」
「私も主人も大賛成だったわ。それに結婚に興味ないって言っていた謙信が、相手がすみれちゃんだって聞いたらコロッと手のひらを返しちゃってね。私も主人も拍子抜けしちゃったわ」
おばさまはクスクスと笑うと、アルバムから私へ視線を向けた。
「そんな謙信を見て思ったの。もしかしたら謙信は、ずっとすみれちゃんが大学を卒業するのを待っていたのかもしれないって。すみれちゃんと結婚したいから、私たちには結婚に興味ないって言っていたのかもしれないって」
「……まさか」