ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

思わず否定してしまう。だってそれはないと思うから。

「あら、本当よ？　それに謙信がすみれちゃんが就職に困っていると知って、うちの会社で雇ってほしいって主人に直談判したんだから」

「え……謙信くんが、ですか？」

おばさまがおじさまにかけ合ってくれたんじゃないの？

聞いていた話とは違い、目を丸くさせる私におばさまは「本当よ」と繰り返す。


「思い返せば謙信は、ずっとすみれちゃんのことばかりだったわ。いつもなにかと気にかけていたもの。……ねぇ、すみれちゃん。……正直なところ、すみれちゃんはどう？　急な婚約で本当は困っていない？」

私の様子を窺いながら聞いてきたおばさまに、慌てて首を横に振る。

「いいえ、そんな！　困るだなんて……！」

否定するものの、おばさまの表情は晴れない。

「本当に？　先生や謙信に言われてしかたなく……だったら正直に言ってね。そのための婚約期間でもあるのだから。謙信には幸せになってほしいけど、それはすみれちゃんもだから」

「おばさま……」