ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
それでも平静を装い、テーブルの上に置かれている、いつものようにすみれがポストから取ってくれた新聞に目を通していく。

けれどまったく内容が頭に入ってこない。

これまでのすみれだったら、あんなことが起こった次の日は必ず様子がおかしくなる。

目を合わせてくれず挙動不審になったり、俺の様子を窺いながらチラチラ見てきたり。

そういうのが一切ない。……もしかして昨夜のことは夢だったのだろうか。

そんなバカげたことを考えている間に、キッチンには芳しい珈琲の香りが漂う。程なくしてすみれが珈琲の入ったカップを、テーブルに置いた。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

そして向かい合い座ると、彼女は手を合わせ食べ始めた。

やはりいつもと変わらない。これはいよいよ夢の中の出来事だったのかもしれない。

最近ずっとすみれに対する想いの変化に、戸惑っていたから。

新聞を折りたたみ、俺もまた手を合わせ食べ始める。

テレビでは毎朝すみれが欠かさずチェックしている占いコーナーが始まったとき、彼女は珈琲を飲み、恐る恐る話し始めた。
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