ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「開けてもいい?」

「もちろん」

渡された箱を開けると、中には真珠のイヤリングが入っていた。

「ばあさんも母親から譲り受けたものなんだ。それを結婚式につけておった」


そう、だったんだ。そんな大切なものだもの。おばあちゃん、楽しみだったよね? これを結婚するお母さんにプレゼントするのを。

おばあちゃんの気持ちを考えると、涙が溢れそうになる。きっとお母さんだってこれを譲り受けたかったはず。ふたりの気持ちを想えば思うほど、胸が熱い。

「死んだばあさんの願いを、叶えてやることはできんかった。……だからすみれにもらってほしいんだ」

「……私に?」

イヤリングからおじいちゃんへ視線を移すと、なぜかおじいちゃんは目を潤ませていた。

「あぁ。ばあさんもそしてすみれの母さんも天国で喜んでいるだろう。こんなに早く嫁の貰い手が見つかったのだから」

「…………え」

涙は引っ込み、頭の中は、ハテナマークで埋め尽くされていく。

おじいちゃんってばなにを言っているの? 嫁の貰い手が見つかったって……なにかの冗談でしょ?
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