ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「や、やだなおじいちゃん。虚しくなるようなこと言わないで。私にはそんな相手、いるわけないじゃない」

渇いた笑いが出てしまう。

友達はもちろん、恋人だっていたことがない。そんな私に結婚相手だなんて。

なのにおじいちゃんは、キョトンとしちゃっている。


「なにを言ってる。隠すことないだろう? 今日、プロポーズされたんじゃろ?」

「プロポーズ!?」

いつになく大きな声を出した私に、おじいちゃんは目を瞬かせた。


「な、なんじゃなにも聞いておらんのか? 自分ですみれに話して、誕生日の日に指輪を渡してプロポーズすると聞いておったが……」

「誕生日に指輪って……」


寝耳に水な話に、ただ驚くばかり。そもそもおじいちゃんは、誰の話をしているの?

私にプロポーズしてくれるような相手などいないのに。

たまらず声を上げた。

「おじいちゃん、最初から話してくれる? なにがなんだかわからなくて……」

「それは俺から話すよ」

「――え」

突然聞こえてきた声にビクッと肩を震わせてしまう。
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