ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
正直、今が夢の世界であるような気がする。こうして実際に病院に来た今も。

だっておじいちゃんが手術中だなんて――。謙信くんがそれを私に黙っていたことも、だから結婚を決めたことも信じられない。

それをもしかしたら今から現実だと受け入れる時がきたら私……どうなのかな。

どうなっちゃうんだろう。自分のことなのにわからないなんて。

戸惑い立ち尽くしてしまうと、見かねた一弥くんは私の手を取り歩き出した。

「え、あ……一弥くん?」

彼はなにも言わず突き進む。そして呼び出したエレベーターに乗り込むと、私の手を強く握りしめた。


「いいよ、受け入れられなくても。その時は俺が支えてやる。だけど事実だけは知ってほしい。……知らないまま結婚なんてしてほしくない」

「一弥くん……」

エレベーターは目的の階にたどり着き、ゆっくりとドアが開かれた。

「行くぞ」

最後にそう言うと一弥くんは私の手を強く握ったまま歩き出す。

薄暗い廊下の先は明るく、人影が見えた。
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