ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「氷室さん、おじいさんの手術、まだかかると思いますし、場所を変えてすみれちゃんに話してあげてください。……一弥の言う通り、おじいさんのそばに一番ついていたいのは、すみれちゃんですから」

「叔父さん……」

叔父さんの言葉に謙信くんは、私の様子を窺ってきた。

「謙信くん、お願い」

もう一度伝えると、彼は叔父さんに「すみません、席を外します」と言うと、私の肩を抱き廊下を進んでいく。

向かった先はエレベーターホール。一台の長いすがあり、先に腰を下ろした謙信くんに続き私も座った。

けれど心が落ち着かず、膝の上で拳をギュッと握りしめてしまう。

すると謙信くんはそんな私の手を包み込むように握りしめた。

「ごめん、すみれ。……じいさんのこと、黙ってて」

私の手を握ったまま語り出した謙信くんの話に耳を傾けた。

「じいさん……心臓を患っているんだ。歳も歳だし、手術するか最後までずっと悩んでいた」

おじいちゃん心臓が悪かったなんて――。きっと病院にも何度も通っていたんだよね？　それなのに私、全然気づけなかった。