ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「謙信くん……いつからおじいちゃんの病気のこと、知っていたの?」

「それは……」

言葉を濁す彼を見ると、重なり合う視線。

「どうして私に話してくれなかったの……?」


一弥くんが教えてくれなかったら私、ずっと知らないままだった。最悪、もう二度とおじいちゃんに会えないかもしれないのに。

なのにどうして教えてくれなかったの?

答えが知りたくてジッと見つめるものの、謙信くんは視線を落とし「ごめん」と呟いた。

「ごめんって……どうして教えてくれないの?」

聞いても謙信くんは視線を落としたまま答えてくれない。その姿に苛立ちを覚えていく。

「一弥くんから聞いたの。……謙信くんが私と結婚を決めたのは、おじいちゃんが病気で、もしかしたら私がひとりになるかもしれないから? だから可哀想だと思って結婚を決めたの?」

「なに言ってっ……!」

顔を上げ私を見る彼の顔は焦っているように見える。そんな顔を見せられては、止まらない。

ちゃんと謙信くんの口から聞きたいと思っているのに怖くて、彼の声に被せた。
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