ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

だから今のままの関係は終わりにしたい。もう一度片想いからはじめたい。

「すみれにとってあいつは、それほど大切な存在？　……どんなに俺が頑張っても、これから先もずっと」

一弥くんは苦し気に表情を歪ませていて胸が痛い。でも、だからこそ嘘をつきたくない。正直な気持ちを伝えるべきだ。

彼の瞳をしっかり捕らえたまま言った。


「うん、この先もずっと私にとって謙信くんは大切な存在。……だってどんなに諦めようと思っても、諦めずにいた人だもの。この気持ちは絶対に変わらない自信がある」

迷いなく伝えると、一弥くんは「フッ」と笑った。

「清々しいほどハッキリ言うな、お前。……おかげで女々しく片想いする気力、失せたわ」

そう言うと彼はポンと私の頭に触れた。

「昔はお前に追いつくのにいっぱいいっぱいだった。早く身長抜かしてやりたくてさ。……こうやってあいつがすみれの頭を撫でているのが、羨ましくてしかたなかった」

私の頭に触れる彼の手は温かくて優しくて。そして私を見つめる瞳に泣きそうになる。