ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「だめなじいちゃんだな。ずっと成長を見守ってきたというのに、お前の強さを見抜けずにいたのだから」

「……それは私もだよ? ……誰よりも長い時間、おじいちゃんといっしょにいたのに、病気のことに気づけなくてごめんなさい」

震える声を絞り出すと、おじいちゃんは首を横に振った。


「すみれ……今回は手術が成功し、じいちゃんの寿命は延びたが、これだけは覚えておいてほしい。どんなに頑張ってもじいちゃんはいずれ、お前を遺して先に逝くことを。その時はいつきてもおかしくないことを」

「……うん」


今回のことで身を持って理解した。その覚悟を持てずにいたから、おじいちゃんは病気のことを話してくれなかったんだ。


もう現実から目を背けたりしない。おじいちゃんがいなくなる未来が、いずれくることをちゃんと受け止めるから。

「それとあとひとつ。……どうかじいちゃんが生きている間に、幸せになってくれ。今のすみれと謙信なら、幸せになれる」

「おじいちゃん……」

目を赤くし笑うおじいちゃんに、胸に熱い想いがこみ上げる。
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