ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「それに俺にとってもメリットがある。両親もお気に入りのすみれと結婚したら、今後はうるさく言われることもなくなるし、お前とはずっと昔からいる仲だ。気兼ねなくお互い暮らしていけると思わないか?」

「それは……そうだけど」


でも結婚だよ? そんな理由で決めちゃってもいいの?

それになにより話を聞いていると、とてもじゃないけれど謙信くんが私を好きとは思えない。

謙信くんは好きじゃない私と結婚しても平気なの?

喉元まで出かかった言葉。けれどなかなか出てくれない。だって聞くのが怖いから。


答えなんてわかっている。ただ単に謙信くんは私といると面倒じゃないから、結婚してもいいって思ったんじゃないかな?


それを本人の口から聞くのは辛い。私はずっとずっと謙信くんのことが好きだった。できればこの先の未来もそばにいたいと思っているから。

なんて言ったらいいのか困っていると、謙信くんは箱の中から指輪を取り出した。


「きっとうまくいくと思う。……それに結婚するからには、この先なにがあってもすみれのこと、全力で守っていくから」

「謙信くん……」
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