ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「どれ、じいちゃんが出るか」

そう言いながらおじいちゃんは家の中に入っていったけれど、私は玄関先で立ち尽くしたまま。

今まで考えたこともなかったから。……おじいちゃんがいなくなる世界なんて。

物心つく頃から、私の家族はおじいちゃんただひとりだった。


両親がいなくても、おじいちゃんがいてくれたから、寂しいなんて思わなかった。そんなおじいちゃんがもしいなくなってしまったら、私はどうなってしまうんだろう。

でもこれだけは間違いなく言える。今の私のままじゃおじいちゃんを安心させることができないってことだけは。


そう思うとこれはいい機会なのかもしれない。好きな人のそばにいるためにも、大切なおじいちゃんを安心させるためにも、自分を変える大きなチャンスなのかも。

この機会を逃がしたらきっと私、いつまでもずっとこのままな気がするから。

想いを巡らせていると、引っ越し業者が声をかけてきた。


「すみません、荷物の方積み終えたので、確認していただいてもよろしいでしょうか? それと新居での方なのですが……」

「はっ……はい!」
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