ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

昔は学校で嫌なことがあるたびに謙信くんが励ましてくれたんだよね。時にはこうやって慰めてくれたりもした。

昔のことを思い出していると、謙信くんはゆっくりと私の身体を離した。

けれど距離が近いことに変わりはなくて、切れ長の瞳に見つめられると、嫌でも胸が高鳴る。

「早く着替えていこう」

「う、うん……」

するとやっと謙信くんは私から離れ、ベッドからおりた。

「リビングで待っているから」

「わかったよ」


私もベッドからおり、着替えようとクローゼットに向かったものの……。なぜか謙信くんは部屋から出ていこうとしない。

「あの、謙信くん……？」

出ていってくれないと着替えられないんだけど。

ジッと彼を見つめると、謙信くんは真顔で言った。

「いや、昔と比べてどれだけすみれが成長したか、しっかりと見届けようと思って」

「なっ……なに言ってっ」

口をパクパクさせる私に謙信くんは続ける。

「別に平気だろ？　昔、何度かいっしょに風呂入ったじゃん」