ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
その後向かった先は、食器や調理器具などが買えるホームセンターへ向かうのかと思ったんだけど……。

「いらっしゃいませ。なにかありましたら、どうぞお声掛けください」

「ありがとう。さっそくだけど、食器類を見せてもらってもいいかな?」

「かしこまりました。どうぞこちらにお掛けになってお待ちください」

やって来たのは見るからに高級そうなインテリア雑貨などを取り扱っている、セレクトショップ。

客は私たち以外いなくて、入店するとすぐに店員が声を掛けてきた。

そして案内された先は奥にあるふかふかのソファテーブル。

「け、謙信くん! ここで食器類買うの?」

店員が席を外している間、小声で彼に問う。

「え、もしかしてここじゃ嫌だった?」

「そんなことないけど……」

ただ、ここで買うとなると嫌でも店員さんと話をしながらになる。

いくら謙信くんもいっしょだと言っても、なにも話さないわけにはいかないよね? それなのに私、大丈夫かな。相手を不快にさせたりしない?

不安に襲われていると、隣に座る謙信くんは私の頭にポンと触れた。
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