ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
一喜一憂している間に、謙信くんは店員さんからカタログの説明をされていた。

「こちらなどオススメとなっております。なにか色やデザインなど、こだわりございますか?」

「そうだな……。すみれどう? こんなの、すみれが好きそうなデザインだと思うんだけど」

そう言って彼がカタログのあるページを指差した。

それは白を基調に色とりどりの水玉模様があしらわれた、可愛らしい食器だった。

私、水玉模様が昔から好きでよく手帳やノートなど、日常で使うものは水玉で溢れている。

「……うん、すごくいいと思う」

それを覚えてくれていたことがうれしくて自然と口元が緩む。

「でしたら、こちらの中からぜひ。物によっては取り寄せになってしまうのですが、在庫があるものもございますので」

「は、はい」

店員さんにニッコリ笑いかけられ、背筋がピンと伸びる。

「オススメはこちらのペアのお皿セットになります。色違いでお使いになれますし、当店でも人気の商品となっております」

「そ、そうなんですねっ……!」

大丈夫かな? 私、ちゃんと店員さんと普通に話せているかな?
< 57 / 251 >

この作品をシェア

pagetop