ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。

「まぁ、そうだったんですね。そうですよね、今が幸せだからこそ恥ずかしくもありますよね。羨ましいです」

「ありがとうございます。ではさっき言ったものを全部いただいてもよろしいでしょうか？」

「ありがとうございます！　すぐにご用意いたしますね」

“全部いただく”に店員さんは一段と高い声を上げ、いそいそと店内へと向かっていった。

商品を手配する彼女の後ろ姿を横目で見た後、謙信くんの手は離れ、そっと私の背中に触れた。

「リハビリ初日にしては、うまく話せていたんじゃないか？」

「え？」

「さっき、ちゃんと店員と話せていたよ。それに誰だって最初からなんでもスマートにこなせる人間ばかりじゃない。みんな失敗を繰り返すものだ。……だからあれでいいんだよ」

彼の言葉も背中に触れる手もやさしくて、あたたかい。

私の気持ちを汲んでかけてくれた言葉が、胸にじんわりと染みていく。

そっか、失敗してもいいんだ。最初はうまく話せなくてもいい。そう思うだけで心は軽くなり、声を出したら泣いてしまいそうになる。