ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
頷くだけしかできなかった私の背中を、謙信くんは店員さんが来るまでずっと擦ってくれていた。

「お嬢さん、今日はカツオがオススメなんだ。どうだい？」
「あ……えっと、ではお願いします」

「はいよ！」

威勢のいい声で言うと、大将は手早く寿司を握っていく。


セレクトショップを後にすると、謙信くんは「新しい服を買おう」と言い出し、商業ビルへ連れていかれた。当然店に入ると、店員さんに声を掛けられたものの……。


隣にいた謙信くんがフォローしてくれて、店員さんに普段自分が着ている服や、どんなものが好みなのかをしっかり伝えることができた。

すると店員さんはすごく素敵なコーディネートを提案してくれて、一目で気に入った。

私だけではなく謙信くんも気に入り、私の話など聞かず会計を済ませてくれてプレゼントしてくれたんだ。

商業ビルで軽食を済ませ、少し早い夕食にやって来たのは謙信くん行きつけの寿司屋だった。


カウンター八席しかない狭い店内だけれど、カウンターのケースには美味しそうなネタがたくさんあり、気さくな大将が次から次へとオススメのネタで寿司を握ってくれている。
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