ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「お嬢さん、謙信はこれまで女関係は派手だったが、若気の至りだと思って許してやってくれ。……こいつ、ずっと言っていたんだ。結婚に対して夢を抱けない、今後するつもりはないってきっぱりとな。……そんな謙信の心を変えたんだ。お嬢さんは自信持っていい」


「大将……」

おもむろに隣に座る謙信くんを見れば目が合った瞬間、照れくさそうに目を伏せた。


「大将、そういう話をすみれにしないでくれよ。……これでも俺、すみれの前ではずっと“カッコよくてやさしい幼なじみのお兄ちゃん”で頑張っていたんだから」

まるで拗ねた子供のように話す謙信くんに、大将とふたり思わず笑ってしまった。

私、ちょっと自惚れてもいいのかな? 自信を持ってもいい?

謙信くんの今までの彼女とは違うって。私が変われば、これから先もずっとそばにいられるって。

そう願わずにはいられなかった。
< 62 / 251 >

この作品をシェア

pagetop