ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
オフィスを出て人通りの少ない廊下を歩いていると、一際目を引く人物を視界が捕らえる。
コツン、コツンと革靴を鳴らし、凛と背筋を伸ばして真っ直ぐ向かってくる人物に足が止まってしまう。
すれ違う社員はみんな頭を下げる。それもそのはず。相手は社長のひとり息子であり、我が社の専務でもあるのだから。
身長百八十センチ。スラッと伸びた手足に広い肩幅。黒の短髪はいつもワックスで整えられていて、いかにも仕事がデキる雰囲気を醸し出しているのは、私より六歳年上の氷室謙信(ひむろ けんしん)。
私の幼なじみでもあり……初恋の人で、今でも密かに想いを寄せている相手だったりする。
「すみれ!」
ボーっと立ち尽くしてしまっていると、私に気づいた謙信くんは顔を綻ばせた。
「ちょうどよかった。今、経理課に行こうと思っていたんだ」
私の目の前で立ち止まると、彼は手にしていた紙袋を私に差し出した。
「これは……?」
紙袋と謙信くんを交互に見てしまうと、彼はクスリと笑みを零した。
コツン、コツンと革靴を鳴らし、凛と背筋を伸ばして真っ直ぐ向かってくる人物に足が止まってしまう。
すれ違う社員はみんな頭を下げる。それもそのはず。相手は社長のひとり息子であり、我が社の専務でもあるのだから。
身長百八十センチ。スラッと伸びた手足に広い肩幅。黒の短髪はいつもワックスで整えられていて、いかにも仕事がデキる雰囲気を醸し出しているのは、私より六歳年上の氷室謙信(ひむろ けんしん)。
私の幼なじみでもあり……初恋の人で、今でも密かに想いを寄せている相手だったりする。
「すみれ!」
ボーっと立ち尽くしてしまっていると、私に気づいた謙信くんは顔を綻ばせた。
「ちょうどよかった。今、経理課に行こうと思っていたんだ」
私の目の前で立ち止まると、彼は手にしていた紙袋を私に差し出した。
「これは……?」
紙袋と謙信くんを交互に見てしまうと、彼はクスリと笑みを零した。