ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
それでも最後にどうしても聞きたかったことを問いかけた。

「わ、私よりもっと素敵な人が現れちゃったら? その人と結婚したいっておもうくらい好きになっちゃったら?」

謙信くんはこれまで、誰のことも好きになれなかったって教えてくれた。でもこれから先は誰にもわからない。

もしかしたら好きになれる相手が現れるかもしれない。

不安をかき消すように奥歯をギュッと噛みしめ、彼の答えを待つ。すると謙信くんはすぐに言った。


「そんなことあるわけないだろ? ……それに俺、初めて好きになれる相手と巡り合えるとしたら、すみれがいい。そう思ったからこそ、お前と結婚したいと思ったんだ」

「……っ!」

息が詰まるかと思った。それほど衝撃的な話。

だってまさか謙信くんが、そんな風に思ってくれていたなんて。

「それに俺も不安がないって言ったら嘘になる」

「……え?」

目を見開く私に、謙信くんは意外な胸の内を明かしてくれた。
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