ワケあって本日より、住み込みで花嫁修業することになりました。
「そうか、それはよかった。……女性が多い職場だからね。ちょっと心配していたんだ。でも口下手なもので、毎日昼休みふたりで過ごしているというのに、声をかけられなかった。……不甲斐ない上司で申し訳ない」

「そ、そんな……! とんでもございません!!」

部長が私なんかに頭を下げ謝ってきたものだから、思わず立ち上がってしまった。

「そ、それに私も同じです!! ……人と、その……うまく話すことができませんで。……なのでえっと……」

声を上げたのはいいものの、途中でなにを言ったらいいのかわからなくなり、言葉に詰まる。

すると部長はそんな私の心情を察してくれたのか、「じゃあ僕と同じだ」と言うと私を見据えた。

「僕たち、どうやら似た者同士なようですね」

にっこり笑った部長につられるように、私も自然と口元が緩んでしまった。



「今日の昼休みに部長から魚の煮つけのコツを教わったの。どうかな? 自分ではうまくできたと思うんだけど……」

恐る恐る目の前に座る謙信くんに尋ねると、彼はすぐに「うん、すごく美味しい」と言ってくれた。
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